高齢になったり、病気の治療が続いたりすると、「もしものときに備えて、何か準備しておいた方がよいのだろうか」と考えることがあります。
ただ、まだ一緒に過ごしているうちから火葬や供養を考えることに抵抗を感じる人もいるでしょう。
生前にすべてを決めておく必要はありません。今できるのは、かかりつけ動物病院や夜間救急の連絡先、亡くなった後のおおまかな流れ、火葬方法の違いなどを、必要な範囲だけ確認しておくことです。
この記事では、今の治療や生活を優先しながら、必要になったときに慌てないために確認しておけることを整理します。
ペットが亡くなる前に準備は必要?
ペットが高齢になったり、終末期を迎えたりしたからといって、火葬や供養についてすべて決めておく必要はありません。
火葬日時、納骨先、骨壺、仏壇、位牌、メモリアル用品などは、亡くなった後に考えられるものも多くあります。
一方で、急変時の連絡先や、火葬方法によって返骨できるかどうかなど、事前に知っておくと判断しやすくなることもあります。
「準備する」というより、必要な情報だけ確認しておくと考えるくらいでよいでしょう。
葬送準備より、今の医療と生活を優先する
まず優先したいのは、現在の治療や苦痛の軽減、食事、水分、排泄、服薬、過ごしやすい寝床など、今の生活です。
通院が難しくなってきた、自宅での看取りを考えている、痛みや呼吸の苦しさが気になるといった場合は、火葬準備を急ぐより、主治医へ相談しましょう。
往診や在宅看護、緩和ケアに対応できる範囲は、病院や地域、症状によって異なります。
「最期が近い」と自己判断しない
呼吸が苦しそう、反応が弱い、けいれんが続く、強い痛みがあるなどの変化があった場合は、「もうすぐ亡くなるサイン」と決めつけず、動物病院へ相談します。
食欲が落ちた、眠る時間が増えた、歩きにくくなったといった変化だけから、残された日数を予測することもできません。
いつもと違う様子があれば、その変化を主治医へ伝えることを優先しましょう。
まず確認しておきたい連絡先
万一の急変時に備えるなら、最初に確認したいのは火葬事業者よりも動物病院の連絡先です。
かかりつけ動物病院
次のような点を確認しておくと、時間外に変化があったときにも動きやすくなります。
- 通常の診療時間と休診日
- 時間外に連絡できるか
- 提携・紹介している夜間救急があるか
- 急変時の連絡方法
- 自宅で亡くなったと思われる場合の相談方法
- 往診や在宅看護に対応しているか
病院によって対応方法は異なるため、「夜間でも必ず主治医につながる」とは考えず、事前に確認しておきましょう。
夜間救急
夜間救急は、施設によって診療時間、対象動物、初診受付、来院前の電話の要否などが異なります。
電話番号だけでなく、住所や受付時間、自宅からの移動方法まで確認しておくと実用的です。
持病や服用中の薬、最近の検査結果なども、すぐ確認できる状態にまとめておくとよいでしょう。
実際に夜中に亡くなった、または生死が分からない場合の対応はこちらで詳しく整理しています。
自宅で亡くなった場合の流れだけ知っておく
事前に細かな安置方法まで覚える必要はありませんが、おおまかな順番を知っておくと落ち着いて対応しやすくなります。
- 生死の判断に迷う場合は動物病院へ相談する
- 死亡が確認されたら、落ち着いた場所へ安置する
- タオルやペットシーツなどで体液に備える
- 涼しい場所で保冷剤などを使って冷却する
- 必要に応じて家族やかかりつけ病院へ連絡する
- 火葬事業者へ連絡し、日時・方法・返骨について確認する
- 行政や保険などの手続きは、その後に確認する
安置や冷却の詳しい方法は、実際に必要になったときに確認すれば十分です。
亡くなった後の安置についてはこちらで詳しく紹介しています。
保冷剤を使った冷却方法はこちらで確認できます。
火葬事業者は「候補」を確認しておけばよい
ペットが生きている段階で、火葬事業者のサービスや料金を調べることはできます。
ただし、調べることと、予約・契約をすることは別です。
急変する時期を正確に予測することはできないため、生前予約や前払いを一律に勧めることはできません。
気になる事業者があれば、候補として連絡先を残しておく程度でも十分です。
候補を見るときの確認ポイント
- 運営会社名と所在地
- 施設火葬か訪問火葬か
- 合同火葬・個別火葬などの方法
- 返骨できるか
- 立会いや拾骨ができるか
- 受付時間と実際の火葬対応時間
- 基本料金に含まれる内容
- 出張費・夜間料金などの追加料金
- キャンセル条件
「24時間受付」と表示されていても、24時間いつでも火葬できるとは限りません。受付時間と実際の対応時間は分けて確認しましょう。
火葬事業者を比較するときのポイントはこちらで詳しく紹介しています。
火葬方法の違いだけ知っておく
火葬方法は、主に合同火葬、個別一任火葬、個別立会火葬などに分けられます。
事業者によって名称や内容は異なりますが、特に確認したいのは、個別の遺骨を返してもらえるかです。
合同火葬では、ほかのペットと一緒に火葬・供養するため、個別に返骨できない場合があります。
一方、個別火葬では返骨に対応するプランがあります。
「遺骨を手元に残したいか」「合同供養でもよいか」について、今の時点での希望だけ家族で共有しておくと、火葬方法を選ぶときの判断材料になります。
合同火葬と個別火葬の違いはこちらで詳しく紹介しています。
家族で全部決める必要はない
生前に家族で話す場合も、葬儀や供養についてすべて結論を出す必要はありません。
次のようなことを、「今のところどう考えているか」という程度で共有しておくとよいでしょう。
- 急変時に誰が病院へ連絡するか
- 誰が移動を担当するか
- 火葬事業者へ連絡する人
- 立会いを希望する家族がいるか
- 返骨を希望するか
- 合同火葬でもよいか
- おおまかな予算
家族の意見がまだまとまっていなくても問題ありません。
特に返骨のように、選ぶ火葬方法によって後から変更できない可能性があることだけ確認し、納骨や仏壇などは後日に考える方法もあります。
自宅にあるものを確認しておく
特別な「終末期セット」を購入しておく必要はありません。
亡くなった後の安置に使えるものが自宅にあるか、確認しておく程度で十分です。
- 清潔なタオル
- 古いシーツ
- ペットシーツ
- 家庭用保冷剤
- 体が収まる箱・かご・ベッド
- ガーゼや柔らかい布
ドライアイスを生前から買っておく必要はない
ドライアイスは時間とともに昇華するため、生前から購入して長期間保管しておく用途には向きません。
家庭用冷凍庫へ入れても昇華は止まらないため、必要になってから入手先や火葬事業者へ相談する方法で構いません。
使用するときは素手で触れず、十分に換気し、ペットボトルや瓶などの密閉容器へ入れないようにします。
子どもや同居するペットが触れたり、口に入れたりできない場所で扱いましょう。
写真や思い出は「日常の記録」として残す
写真や動画、毛、首輪などを残したい場合も、「最期に備える作業」と考える必要はありません。
普段の生活のなかで、無理のない範囲で残せるものがあります。
- 日常の写真や動画
- 寝顔や好きな場所で過ごす姿
- 家族と一緒にいる写真
- 肉球や毛並みの写真
- ブラッシングで自然に抜けた毛
- 自然に抜けたひげ
- 首輪や迷子札
体調が悪いときに無理に写真を撮ったり、足形を取ったりする必要はありません。
何かを残すかどうかにも、一つの正解はありません。
毛・爪・肉球などを思い出として残す方法はこちらで詳しく紹介しています。
行政・保険の手続きは「存在だけ」確認しておく
死亡後には、火葬以外にも確認が必要になる手続きがあります。
ただし、これらは今すぐ手続きを始めるものではありません。生前は、窓口や書類の場所を確認しておく程度で十分です。
犬の死亡届
登録されている犬が亡くなった場合は、狂犬病予防法に基づき、死亡後30日以内に登録している市町村へ届出が必要です。
生前にできるのは、登録自治体、犬の登録番号、鑑札などの保管場所を確認しておくことです。
実際の届出方法や鑑札・注射済票の扱いは、登録自治体の公式案内を確認してください。
マイクロチップ
環境省の指定登録機関へマイクロチップ情報を登録している犬・猫が亡くなった場合は、死亡等の届出が必要です。
登録証明書や登録メールなどから、どこへ登録しているかを確認しておきましょう。
自治体によっては犬の登録手続きと連携する制度もあるため、死亡後は登録自治体とマイクロチップ登録先の公式案内を確認します。
ペット保険
ペット保険の死亡時の手続きや未請求分の扱いは、保険会社や契約内容によって異なります。
生前に確認しておくなら、次の程度で十分です。
- 保険会社名
- 商品・プラン名
- 契約番号・証券番号
- 保険証・保険証券の保管場所
- 未請求の診療費や領収書
- 死亡後の連絡窓口
死亡に備えて、生前にペット保険を解約しておく必要はありません。
死亡前の診療費に未請求分がある場合は、死亡後や契約終了手続き後でも請求できることがあります。領収書や診療明細書を保管し、請求期限や必要書類を加入先へ確認しましょう。
今決めなくてもよいこと
必要になったときに決められることまで、生前にすべて選んでおく必要はありません。
たとえば、次のようなことは後から検討できます。
- 実際の火葬日時
- 火葬事業者との正式契約
- 納骨先や納骨時期
- 骨壺や骨壺カバー
- 仏壇・仏具・位牌
- 散骨
- 分骨
- ミニ骨壺
- 遺骨アクセサリー
- その他のメモリアル用品
火葬後にいったん遺骨を自宅へ持ち帰り、落ち着いてから供養方法を考えることもできます。
火葬後に自宅で供養する方法はこちらで紹介しています。
緊急時メモを作っておくのも一つの方法
全部を覚えておく必要はありません。
スマートフォンのメモなどに、次の情報をまとめておくと、急変時にも確認しやすくなります。
- ペットの名前・動物種・年齢・体重
- 持病・既往歴・アレルギー
- 薬名・投与量
- 最後に薬を与えた時刻
- かかりつけ動物病院
- 夜間救急
- 家族や頼れる人の連絡先
- 移動手段
- ペット保険会社・契約番号
- 火葬事業者の候補
- 返骨について現在考えていること
- 犬の登録自治体
- マイクロチップ登録証明書の保管場所
火葬方法や返骨についてまだ決めていない場合は、「未定」「家族で相談」と書いておいて構いません。
よくある質問
ペットが亡くなる前に、火葬業者を決めておくべきですか?
一社へ決めておく必要はありません。候補となる事業者の連絡先や火葬方法、返骨の有無、料金などを確認しておく程度でも十分です。
生前予約は必要ですか?
生前予約を一律に勧めることはできません。予約や契約を検討する場合は、前払い、キャンセル料、返金条件などを確認してください。
保冷剤を準備しておいた方がいいですか?
家庭用保冷剤が自宅にあるか確認しておく程度で構いません。必要数や使い方はペットの体格や室温などで変わるため、実際に必要になったときに確認しましょう。
ドライアイスを買っておいた方がいいですか?
生前から購入して保管しておく必要はありません。時間とともに昇華するため、必要になった場合に入手先や火葬事業者へ相談しましょう。
骨壺や仏壇を先に用意した方がいいですか?
事前購入は必須ではありません。火葬プランに骨壺が含まれていることもあり、仏壇や供養用品も火葬後にゆっくり選べます。
納骨先まで決めておく必要がありますか?
火葬前に決める必要はありません。返骨後に自宅で供養しながら、納骨先や時期を考える方法もあります。
まとめ
ペットが亡くなる前に、火葬や供養についてすべて準備しておく必要はありません。
まず優先したいのは、現在の治療や苦痛の軽減、毎日の生活について主治医と相談することです。
そのうえで、かかりつけ動物病院や夜間救急の連絡先、自宅で亡くなった場合のおおまかな流れ、火葬方法と返骨の違いなどを確認しておけば、必要になったときの判断材料になります。
火葬事業者との正式契約、納骨、骨壺、仏壇、メモリアル用品まで、今決める必要はありません。
何も考えたくないときは、病院と夜間救急の連絡先だけ確認しておく方法でも構いません。
準備することと、お別れを急ぐことは別です。今一緒に過ごしている時間と、その子が少しでも穏やかに過ごせることを優先しながら、必要な情報だけ少しずつ整理していきましょう。